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NPO法人設立

行政書士伊東事務所(東京都立川市)

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NPO法人を設立するにはさまざまな条件(要件)をクリアすることが必要です。以下ではその要件について述べます。

NPO法人の設立の要件

NPO法人の設立には、次の(1)~(15)の要件に該当することを要します。

(1) 特定非営利活動を行うことを主な目的とする団体であること

特定非営利活動とは何かについて、次の20分野の活動が特定されています。

この特定された非営利活動のいずれかに該当することが要件の第一です。

  • 1. 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
  • 2. 社会教育の推進を図る活動
  • 3. まちづくりの推進を図る活動
  • 4. 観光の振興を図る活動
  • 5. 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
  • 6. 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
  • 7. 環境の保全を図る活動
  • 8. 災害救援活動
  • 9. 地域安全活動
  • 10. 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
  • 11. 国際協力の活動
  • 12. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
  • 13. 子どもの健全育成を図る活動
  • 14. 情報社会の発展を図る活動
  • 15. 科学技術の振興を図る活動
  • 16. 経済活動の活性化を図る活動
  • 17. 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
  • 18. 消費者の保護を図る活動
  • 19. 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
  • 20. 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動(*東京都では、条例で定めた活動はありません。)

(2) 不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とする活動であること

「不特定かつ多数のものの利益」とは、「社会全体の利益」という意味です。

したがって、特定の個人の利益や特定団体の利益を目的とする活動であってはいけません。 また、構成員である会員の利益を目的とした活動も不適格です。これらは、「不特定かつ多数のものの利益」のための活動とはいえないからです。

(3) 営利を目的としないこと(非営利)

「営利を目的としない」とは「非営利」のことです。

これは、事業を行って利益を得てはいけないという意味ではありません。利益を得てもよいが、構成員である会員に対して、その利益を分配しないということです。

活動で得た収益を会員間で山分けしてはいけません。 発生した利益(剰余金)は、翌期に繰り越して、特定非営利活動の事業資金とします。

また、NPO法人は、特定非営利活動に係る事業に支障がない限り、特定非営利活動以外の事業(「その他の事業」)を行うことができると定められています(第5条)。

「その他の事業」として、収益事業などを行うことが想定されていますが、この収益事業で生じた利益は、その特定非営利活動にかかる事業のために使用しなければならないとされています(第5条)。したがって、この利益も会員間で分配することができません。

(4) 宗教活動や政治活動を主な目的としないこと

「宗教活動」とは、「宗教の教義を広め、儀式行事を行い、又は信者を教化育成すること」をいい、「政治活動」とは、「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対すること」をいいます(第2条)。

これら宗教活動や政治活動を主な目的として活動することができません。 宗教活動については、宗教法人法による法人格取得ができること、政治活動については、政治資金規正法による活動によるべきだとの考えから、NPO法人による活動が制限されています。

宗教活動を「主たる目的」とすることはできませんが、「従たる目的」として宗教活動を行うことは可能です。また、特定の宗教の信者が中心となっている団体であっても、そのこと自体は問題ではない。

政治活動については、たとえば、公害の防止・核兵器廃絶・自然保護・福祉の推進などの活動は、政治的な意味をもつこともありますが、制限されるものではありません。

法文上は、「政治上の施策」と区別して「政治上の主義」という文言が用いられています。「政治上の主義」とは、自由主義・社会主義などの一般的原則をいい、それを目的とすることはできませんが、公害の防止・核兵器廃絶・自然保護・福祉の推進などは、「政治上の施策」に該当し、これらは、NPO法人の目的とすることができます。 政治活動を「主たる目的」とするこはできませんが、「従たる目的」として政治活動を行うことはかまいません。

(5) 特定の公職の候補者・公職にある者・政党を推薦、支持、反対することを目的としないこと

「特定の公職」とは、衆議院議員、参議院議員、地方公共団体の議会の議員及び首長の職をいいます。

これらの者・候補者・政党について推薦・支持・反対することを目的とするNPO法人は設立できません。「主たる目的」はもとより「従たる目的」であっても不可です。

NPO法人が、その活動目的との関係で、公職者・候補者・政党の政策に関して意見を表明すること、あるいは、公職者を集会に招いて議論することなどは、通常、特定の人・政党を推薦する活動とはいえないので、制限を受けません。

これに対して、NPO法人の活動として、主張が同じである特定の政治家を選挙で推薦したり、演説会場の設営に協力することなどは、禁止されます。

なお、NPO法人の役員や会員が、個人の資格で、特定の政治家や政党を推薦支持反対することは、NPO法人の目的とは関係がありません。

(6) 特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として事業を行わないこと

NPO法人の活動は、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とします。受益者が限定された活動は、この趣旨に反することになります。 NPO法人が、株式会社A社の宣伝広告の事業を行う場合、これは特定の法人の利益を目的とした事業となります。

しかし、特定の個人が「結果的に」利益を受ける場合があります。医療福祉の増進や災害救援を目的とするNPO法人の活動で、特定の個人が、医療を受けたり、救助されたりしますが、それは、結果的にそうなったということにすぎず、問題ではありません。

(7) 特定の政党のために利用しないこと

法律は「特定非営利活動法人は、これを特定の政党のために利用してはならない」として、政治的中立の原則を示して、NPO法人を利用した、特定政党を支持・推薦する行為、特定の政党(候補者)への投票をうながす行為を禁止しています。

前記の(4)と(5)でも、政治活動を目的としないこと、特定の公職の者・候補者・政党の推薦支持反対を目的としないこととして、設立の際の目的要件が決められていました。

この(7)は、NPO法人一般について、政治的に中立であるべきことを定めたものです。

(8) 特定非営利活動に係る事業に支障が生じるほど「その他の事業」を行わないこと

「その他の事業」とは、収益事業、共益事業、政治活動、宗教活動などです。 共益事業とは、会員間の相互扶助のための福利厚生事業や共済事業などをいいます。

このような「その他の事業」は、特定非営利活動事業に「支障がない限り」で行うことができます。 支障があるかないかの判断基準として、東京都は、事業の支出額をもとにした考え方で、NPO法人の総支出額に占める特定非営利活動に係る事業の支出額の割合が、50%を超えているかどうかを判断材料としているようです(原則)。

「その他の事業」の「利益」は、特定非営利活動に係る事業のために使わなければならないとされていて、収益事業で利益が生じたときは、それを特定非営利活動に係る事業に振り替えることになります。 「その他の事業」の会計は、特定非営利活動に係る事業の会計から区分して、経理しなければなりません。

NPO法人の経営を安定させるために、積極的に収益事業を展開する経営も必要です。

(9) 暴力団でないこと。暴力団又は暴力団の構成員若しくは暴力団の構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制下にある団体でないこと。

申請に係るNPO法人が、暴力団そのものであるときは、設立の認証はされません。 また、申請に係るNPO法人が、暴力団又は暴力団の構成員若しくは暴力団の構成員でなくなった日から5年を経過しない者の「統制」の下にある団体であるときも設立の認証はされません。

(10) 社員(総会で議決権を持つ「会員」)の資格の得喪について、不当な条件をつけないこと

社員とは、NPO法人の活動目的に賛同する個人・法人で、総会で議決権を有する者をいいます。通常「会員」と言っています。

社員(会員)の資格の取得と喪失について、不当な条件を付けることはできません。不当でない条件であれば付けられますが、合理性を要し、定款に明示する必要があります。

たとえば「会費を納入すること」という条件は不当ではありません。 社員(会員)の退会は自由でなければならないとされています。

(11) 10人以上社員を有すること

NPO法人設立存続には、社員(会員)が10人以上存在することが必要です。これによってNPO法人の団体性が確保されます。

社員とは、NPO法人の活動目的に賛同する個人・法人で、総会で議決権を有する者をいいます。通常「会員」といっています。 日常用語では、会社の従業員を「社員」といっていますが、ここでの「社員」は、NPO法人の「構成員」を意味する用語です。

社員(会員)は、外国人や未成年者でもよく、また親族関係の制限もありません。理事や監事であっても社員になることができます。

(12) 報酬を受ける役員数が、役員総数の3分の1以下であること

報酬を受ける役員の人数は、役員総数の3分の1以下でなければならないとされています。役員全員が報酬を受取ることは妥当ではないのです。

NPO法人は、利益配当をしない非営利性が本質です。全役員が役員報酬を受取ることは、役員報酬に名を借りて、利益配当を行う結果になりかねないので、役員総数の3分の1以下に限定しています。

ここでの報酬は「役員としての報酬」ですので、役員が同時にNPO法人の職員を兼務している場合に、その職員として受取る「給料」は「役員報酬」ではありません。

理事長・副理事長という「長」付きの役員も、職員としての業務に従事している場合には、これに対して「職員給料」を支払うことができます。

職員給料の支払には、人数の制限がありません。

(13) 役員として、理事3人以上、監事1人以上を置くこと

NPO法人の役員とは、「理事」と「監事」のことです。

理事は、対外的に法人を代表し、かつ、対内的には一切の事務を執行するNPO法人の「機関」です。 理事は、社員(会員)を兼ねることができ、また、職員を兼ねることができます。

監事は、法人の財産の状況、理事の業務執行の状況の監査を職務とするNPO法人の「機関」です。 監事は、社員(会員)を兼ねることができます。しかし、理事や職員を兼ねることができません。

(14) 役員は、成年被後見人又は被保佐人など、法律第20条に定める欠格事由に該当しないこと

欠格事由に該当する者は役員(理事・監事)になることができません。

役員の欠格事由は、次の6項目です。

  • (1) 成年被後見人又は被保佐人
  • (2) 破産者で復権を得ない者
  • (3) 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • (4) この法律もしくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したことにより、又は刑法第204条、第206条、第208条、第208条の3、第222条もしくは第247条の罪もしくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わった日又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • (5) 暴力団の構成員等
  • (6) 法律第43条の規定により、設立の認証を取り消された特定非営利活動法人の解散当時の役員で、設立の認証を取り消された日から2年を経過しない者

役員の資格の制限は、以上のみです。したがって、外国人や未成年者も役員になることができます。

(15) 各役員について、その配偶者もしくは三親等以内の親族が2人以上いないこと。また、当該役員ならびにその配偶者及び三親等以内の親族が、役員総数の3分の1を超えて含まれていないこと

親族関係を利用したNPO法人の支配を防止する趣旨で制限条項が設けられています。

まず第1に「役員について、その配偶者もしくは三親等以内の親族が2人以上いないこと」とされています。

これは、ある役員の「配偶者・三親等以内の親族」を役員にする場合に1人ならよいが、2人はだめだということです。

しかし、この「1人ならよい」にも制限があって「役員ならびにその配偶者及び三親等以内の親族が、役員総数の3分の1を超えて含まれていないこと」というものです。

たとえば、役員の総数が5人以下の場合、配偶者及び三親等以内の親族は1人も含まれてはいけないことになります。

役員総数が6人以上の場合は、各役員について配偶者及び三親等以内の親族1人を含むことができます。

この制限規定は、特定の役員とその親族が法人を私物化することを防止する趣旨です。

三親等とは、直系血族では、尊属は曾祖父母(そうそふぼ)、卑属は曾孫(ひまご)までの親族をいい、傍系血族では甥(おい)姪(めい)までをいいます。

下の図は、三親等という親族の範囲を示しています。

法21条により排除される親族図